落下地点(落下事件)
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君は素晴らしい
特に自分が素晴らしくないとわかっているところなんて最高だ
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「ぅゎぁぁぁああああああ!!」
ずどんという音を立てて僕は地面に激突した。
「いたたたた…………」
僕はうつむせになりながら呟いた。体のあちこちが痛い。というよりぽきぽきする。
どれくらいの高度から落ちたのかな。なんかだいぶ高いところから落ちたような気がするんだけど。町らしきものが点に見えたし。
「――まさか骨が折れてないだろうな……」
骨折というものは骨折したことに気が付かないことがままあるのだ。僕はそのことに危機感を覚え、体をいろいろとまさぐってみるが何も異常が無かった。骨が折れて腫れているところも、触ったことによって死ぬほど痛くなるところもない。
そのことに一安心。息をつく。ふう。
「ふぅー。……………………よっこらしょ」
僕は体に少し力を入れて起き上がった。すこしふらふらするが、まあ大丈夫だろう。少しばかり精神的な余裕が出てきたので辺りを見渡してみた。
……………………。
……………………?
……………………!?
「――――ここ、どこ……?」
僕の目に、とても青々した木々たちと、抜くのを躊躇うような立派な花を咲かしている植物と、そこら辺を駆けずり回っている動物達が飛び込んできた。
「……………………いや飛び込んできたら恐いな」
それらの光景が、飛び込んできた、だ。光景を入れるのを忘れてた。
それにしても。
「――いやいやいやいや。たしかにマンガでは何かに落ちたら森だかに落ちるというのは常識ですよ?常識ですとも。でもまさかこの現代でそんなことが起こるわけが――あ、そうか。どっかの悪の研究者がここに秘密基地を作ってたのか。そうかそうか、ってそんなわけあるかァッ!」
一人でボケて一人で突っ込んでみた。
虚しかった。
「……………………」
冷静に、冷静に考えてみよう。
一番現実的な考えは、実は地球には裏の世界があってそこに間違って落ちてしまったのだ、とか。
「…………いやだからそんなことないか」
さっきの悪の研究者説の方がまだ現実味があったな。そもそも悪でなくてもいいし。
うーん。
「そもそもこんな目にあうことが現実的じゃないからな――うーん。そうだな。最有力候補はドッキリだな」
最有力でこれか……我ながら自分が情けなくなってきた。
そもそも殺人鬼にドッキリをしてどうするんだ?家族の皆はこんなことしないだろう。
ここで双識兄さんの顔が浮かぶ。
……………………。
しないこともないかな?
「こうも考えられないかな。僕が異世界に飛ばされたっていうことは?」
ないことは……ないか。僕が敬愛し、尊敬し(以下略)する無識兄さんは異世界から来たって言ってたし。嘘をついてなければの話だけど、というか嘘っぽい話だけど、でも。
「まあ無識兄さんは嘘をつかないだろう」
特に僕に対しては。ただ、何も言わないことはよくあるけど。
「んー?てことは僕も異世界に飛ばされた、って見ていいのかな?」
少なくとも前例はいるし。
まあもちろん異世界なんかじゃなく、普通の世界であるという可能性もとても高いわけなんだけど。
むしろそっちの方が高いんだけど。でもこういうのは嫌な方が当たるしなぁ。
「ここが異世界というよりも、ドッキリでもなんでもいいからここが通常の世界の方がいいな。違う世界だったら家族と会えないもんね」
もちろん助けに来てくれると信じてるけどさ。それでもしばらくの間は誰とも会えないだろう。
特に無識兄さんとか無識兄さんとか無識兄さんとか。
「………とりあえず、ここがどんなところなのか考えないとね」
森なのか、それとも山なのか。しばらくの間歩き回ってみる。すると崖を発見。見下ろすと町が見えた。
「森じゃなくて山か……」
そもそも森と山の区別の仕方がわからない僕にとってはどうでもいいことなのだが。いや、そうではないか。これでやることが決まったのだから。
ここは山である。そして下には町がある。だったら山を降りるのは当然である。……まあ当然というわけではないけど。
「というわけで降りましょー」
……………………さてどこから降りようか?
僕の周りには道など全く無かった。
「獣道というのかね?これは」
うーん。なんか違うかな。
僕は木々の間を滑り込むようにして歩いていく。どっちに降りたら町に着くのかなんて全くわからないのだから、勘で進むことになる。
なんとも情けない話だ……。
「これで一発で町に降りれたら奇跡だな……」
まあ降りたら山の周りを囲むように歩いたらいずれ町の辿り着くだろう。だから当面の問題は崖から落ちたり、虫に刺されたり等のことを心配することにしよう。
「それにしても腹減ったな……」
そう。僕はお腹が猛烈に減ってるのであった。それは当たり前のことで、僕が食べたのは双識兄さんの殺人カレー、一口のみで、それ以外なにも口にしてないのだ。そのあと穴(たしかあれはマンホールだった)に落ちたり、山を歩き回ったりでどんどんお腹が減る環境にあったのだから。これは決して僕が大食漢というわけでは決して無い。
……………まあ普通の人よりもよく食べるのは否定しないけど。
「それにしても山かぁー」
山といったら兄さん達から聞いた竹取山を思い出すな。僕が零崎に成ったのはそれより後だから、そのことを直接は知らないのだけれども。
山。
「――まあここには竹なんてものは無いみたいだな」
まあそれはどうでもいいんだが。
気になるのは前方に存在する複数の気配。
気配から、ここから遠いことがわかり、そしてまたその事実が彼等の実力のほどを窺わせる。
「なんなんだろうね、一体」
これがただの登山客だったら嬉しいんだけど。だったら帰る道(僕にとったら行く道だが)を聞けるから。
しかしこれが物盗り関係ならば。
「もしここが異世界ならば珍妙な技を使うかもしれないしな」
まあ用心をしとこう。そう思いながら僕はまっすぐ、その気配のある場所めがけて歩いていった。
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