不可思議な理論(深し、偽な理論)
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生きることと、死ぬことは簡単だ。
生き抜くことと、死にに行くことは難しい。
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「――――おいおい……」
僕は目の前の情景に頭をフリーズさせてしまった。…………そういえばこれも今日で二回目。
目の前で、サインが――サインだったものが再生していく。否、これはもはや……、
「死者蘇生……?」
少し前に、はやったカードゲームを思い出す。そういえば最近になったらまた復活し始めたんだっけ……。
……………………。
いや何現実逃避をしてるんだ僕は。ちゃんと前を見ないと。前を。
「……………………」
見た目の気味悪さに少しばかり後ず去った。少しばかり警戒もしてみる。
……………………
いや、ほら、僕ってゾンビ、好きじゃないし。そもそも怪談が好きじゃないし。こう言うと皆さん意外に思われるかもしれないけど、実は僕、ホラー系って苦手なんだ。死体を見るのはいいんだけど、それが動くとなると、こう寒気が――――
「――――る」
「……ん?」
構えを取っている僕の耳に、声が聞こえた。しかもそのとき同時に、サインの口が動いた(まだ首が繋がっていないのに、口元が動くのはホラーだ)。
…………まあつまりサインがしゃべってるということで。
「……サイン? 生きてるの?」
「――いたかったでござる……」
「痛かったですむんだ、それ……」
なんかすごいなあ。なぜかはわからないけど、どっかの人類最強を思い出すなぁ。それにしても彼女、どうしてるのかなぁ。帰ったら殺されるだろうなあ――あ、なんか怖くなってきた……(現実逃避にならない現実逃避)
「――しかし……」と不気味に呟くサインちゃん。「これでこそ拙者が仕えるに相応しき人物……」ニヤリという音が本当に出ていそうな声で言った。
というか怖いんですけど。あなたそんなキャラでしたっけ?
「――あ、でも、そういえば僕の優しさと慈悲にすごいと思って仕えたんじゃなかったっけ?」僕に優しさなど無いと思っているがあえて言う。「この行動に慈悲とかを探せってのは無理なんだけど」
「ああ……それは」サインが言う。「その場のノリでござる」
「――――――――はあッ!?」
の、ノリ!? 海苔!?……これは違う。
「ぶっちゃけると主君の顔が好みだったのでござる」
「本当にぶっちゃけちゃったよ…………」
なんだか知らないけど自然と肩が落ちてしまった。なんなんだ、コイツ。確実に知らない人だぞ?
オイ、作者!! ちゃんとキャラの設定考えてから載せろ!
「――――うーんと、それじゃあまあ、心の準備ができたから聞くんだけど……」
唾を飲み込む音がする。
「なんで……生き返ってるの?」
返ってきたのはしばしの沈黙だった。
サインによると。
昔、昔あるところに一人の女の子がいたそうだ。彼女の父は高名な武士で、娘にも武術を教えようとしたそうだ。そしてそれが見事に娘にも嵌ったそうな。
そして、いろいろな修行の中の一つに山での修行があったそうで。
猛特訓の後の小休憩に、サインはある酒を見つける。
いままで見たことの無い入れ物に入っていたその酒。普通の人ならばこんな怪しいもの、無視するか蹴り飛ばすかするだけである。
しかしサインは違った。
なんとその酒を飲んでしまったのだ。
そのおかげで不老不死の力を得ることができたのだが…………。
「それでどうしたの? お父さんは?」
それが……、と言いにくそうに言った。
「お酒を飲んで戻ったところ、そこには誰もいなかったのでござる。慌てて探してみるも、父様は崖の下に……」
「………………………………」
なんというか……ご愁傷様です。
「母様は井戸の下にいたでござるし、弟は川で溺れ死に……」
「………………………………」
なんというか……何も言えませんね。
「それで旅に出たのでござるが、その間に人に斬られたでござる」
そのときに自分が生き返ったらしい。その後も殺されるような目にあっても殺されることも無く、長い年月がたっても老いることもなかったそうだ。そのうちに気付いたらしい。「もしやこれは不老不死?」と……。
「それに気付いたのが、だいたい五百年ほどでござる」
「遅ッ!」
気付くの、遅ッ!
「へえ。不老不死ねえ……」
普通ならそんなもの、文字通り切って捨てる。だが、僕は目の前でそれを見たからなあ……それに哀川潤の存在を知ってる僕としちゃあ信じざるをえないな。
不老不死。不老のほうは正直どうでもいいが不死の方はやっかいである。
なんたって死なないのだ。戯言遣いに聞いたものなんかじゃない。殺しても死なないのである。
これは危険だ。だが……
「もし、僕を殺したときは徹底的に隠蔽してよ?」
「ッ!?」
驚愕の顔つきでサインは僕を見つめてくる。否、もうこれは睨みつけるといった……
「僕は何があっても君に殺されるわけにはいかない。そんなことになれば殺せない君を殺そうと家族が動く。そんな事態にはさせたくない」
家族をそんな化け物の敵にはさせたくない。殺せないなんて殺人鬼には論外だ。
それにここが異世界だからなんて甘えは通用しない。なんたって僕の愛する家族だ。そんな障害など吹き飛ばしてしまうだろう。通常ならばこうやって話してるのも論外。早く逃げなきゃいけない。
でも。
「君は僕たち零崎にとっちゃ希望なんだ。零崎で無い人間と付き合える、そんな夢……それがかなう」
そしてそれは僕も同じ…………。
「だから僕は君と一緒にいたい。でも殺されちゃだめだ。だから徹底的な隠蔽を頼むんだ。それだったら……一緒にいよう」
僕はあまり彼女に語らなかった。でも僕の真剣そうな顔つきに何かを感じてくれたのであろう、神妙な顔つきになって頭を垂れた。
「仰せのままに。主君」
「契約、成立だ」
にっこりと微笑みながら僕は言った。
「そういえば、たくさん生きてるなら念を知ってる?」
「主君は念を知ってるでござるか? まあ、拙者も知ってるでござる。というより覚えているでござる」
「それじゃあ、教えてくれない? 念」
「?
わかりましたでござる」
彼女は――サインは縦に大きく頷いた。
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