仕事(私事)
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前代未聞の最悪最低。
さて、それが何か?
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「へえ。ここが、かの有名な――」
僕はその姿に思わず溜め息をついてしまった。隣を見ると、それはもう「うきうき」といった言葉を体で表現している存在があった。
頼むからそんなに、はしゃがないでくれよ――。僕は心の中で願った。
ここは天空闘技場。荒くれ者の聖地
。常に喧騒が絶えない場所。そんなところに僕たちはいた。
なぜ僕たちがこんなところにいるのかというと――。
あのとき(時間で言うと二日前)、サインから念を教わることになったのだが、その前に重大な問題があるのだった。
衣食住とお金である。
「サイン、お前いくら持ってるんだ?」「しめて500ジェニーでござる!」「少なッ! ……って何自慢気に親指立ててんだ!」「主君! これからもよろしくでござる!」「おい! 俺が面倒見るのか!?」「はい(満面の笑顔)」とかいうことがあった。というか動揺しすぎてつい、俺とかいってしまった。不覚……。
もちろん僕もあまり持っていない。盗賊団の持っていたお金はちょびっとしかなかったのだ。そこで僕は思いついた。楽にお金を稼げ(しかも大量に)、そして住居にも悩まない(いわばホテルに住むような感じの)場所。
天空闘技場の存在に。
ちょうど、僕たちの持っていたお金を合わせて(といってもサインの持っていたお金は雀の涙ほどでほとんど僕のだが)二人で天空闘技場まで行く金額になった。
思い立ったら吉日ということで、急いで天空闘技場行きの飛空船に乗った。
二日間の間、飛空船に揺られながら、天空闘技場に辿り着く。
そして冒頭に戻るのであった。
「それじゃあ並ぶか」
「そうでござるね!」
僕が言うと、サインが楽しそうに答えた。
……うわぁ。なんか女子高生を前にした双識兄さんを相手にしてる気分だ。サインには失礼だけどそう思った。
気持ち悪いほどニコニコ顔のサインと一緒に最後尾に並ぶ。ものすごい笑顔でいっぱいのサインを見ていると思わず質問してしまった。
「お前来たことないのか?」
「はいでござる。だから楽しみでござるぅー」ニコニコとサインは言った。
……………………
なんか、幼稚園児と接してる気分だ(本当に接したことはあまりないが)。いや、むしろ最近の幼稚園児は発育がよろしいから――。
……こいつって幼稚園児以下?少しばかり失礼なことを真剣に考えた。もしかしたら不老不死になったら成長がなくなるのかもしれない。体はともかく、中身が……。
とまあ、いろいろと考えてる間に(だいたい一時間ほどだった)ついに僕たちの番になった。
「それではこの受付用紙に記入してください」
笑顔で微笑みながら(ああ、これは同じ意味か)、受付嬢は僕たちに受付用紙を手渡した。
渡された紙の前で僕は真剣に悩む。
うーん。…………名前、どうしよう――。
もちろん僕には零崎という立派な名前がある。とてもとても立派なものが。しかし、この世界はどちらかというと西洋風の世界だ。こんなところで零崎とかとかいう名前だったら変になってしまう。
……やっぱり偽名ってのが普通かな。
ということで偽名をでっち上げることにした。
名前、。性、。僕が好きな小説の登場人物からつけた。
あとは簡単だった。性別も男だっていう自信があるし、年齢もこの前15才になったばかりだ。ただ、格闘経験では少し悩んだ。だいたい、十五年かな。生まれてからやらされてたような気がする。
紙にその他諸々を書き込んで手渡すと、だいたい同じくらいにサインも書き込んだようだった。
サインの顔は汗で滲んでいる。
……………………。
しかも「難問でござった……」とか呟いている。
……………………。
何も言うまい。ああ、何も。
いろいろな思いを胸に抱きながら僕はトンネル内を歩いていった。コツコツという音が響く。といってもそれだけではないが。
例えば「楽しみでござる〜」とか「友達できるでござるか〜」とか「うふふふふふふ」とか呟くサイン。すごく煩い。そして正直言って少し怖い。
なんか最近、サインがよくわからないものになっていく気がするんだが……。
しばらく歩いていると出口が見えてきた。大勢の歓声が聞こえる。
「それじゃ行こうか、サイン」「はいでござる」
僕たちは頷きあいながら歩いていった。手は繋がなかった。
「それにしてもすごいなあ……」
「そうでござるねー」
僕たちは暇なので、さっきから何十回も繰り返している問答をしていた。しかしそれも終わる。
「1234番、5678番の方はCの闘技場まで来て下さい」
「ぬ……拙者でござるな」
少しばかり緊張した感じでサインが言った。
「それじゃあがんばれ」
「がんばるでござる」
頷きあって分かれる二人。……というかさっきの番号は偶然なんだろうか。
――まあいいや。
すると、すぐに僕も呼ばれた。
「42731番、5677番の方はDの闘技場まで来て下さい」
「お、僕か」
立ち上がって闘技場に辿り着く。そこには巨大な男が立っていた。大きさも、見た目もマンガでゴンの相手をした男そっくりだった。というより……。
「あの男そのままなんじゃないのか?」
見た目は少し若くなった感じである。こんなところで再登場とは彼も思ってなかったに違いない。といっても、どちらにしたところでやられ役、かませ犬であるが。
まあ、リサイクルは大事だ、とても大事。環境は大切に。
相手は僕に気づいたようで、侮りを込めた視線で僕を見つめてくる。
「おいおい、兄ちゃん。そんな細腕で俺とやろうっていうのかい?」
「えーと……無視!」
「……………………」
僕は声を張り上げて言う。すると、場は一瞬だけ静まり返った。
相手は顔を歪ませながら、それでも冷静な風を装いながら言う。
「そんなに俺を「無視!」
相手の言葉を遮って僕は言った。もう我慢の限界だったようで、男は「おりゃぁぁぁぁぁー」と叫びながら僕に襲い掛かかる。
勝負は一瞬でついた。否、一瞬でつけた。
僕は素早く相手の懐に忍び寄り、そして一瞬で鳩尾をついた。
「……………………」
先ほどよりもさらに一瞬場が静まり返り、そのあと、どっと騒がしくなった。こんなひ弱そうな男があの巨漢を一瞬で倒したことに驚きを隠せないといった風である。
「ふう」
僕は溜め息をついた。なんとか殺さないで倒すことができた。二百階ならいざしらず、ここで人殺しなんかやったらだめだろう。多分。
「君――」
審査員らしい人が驚きを隠せないままこちらにきた。感情を隠せないなんてプロ失格だぞ。
「その攻防はすばらしかった。130階に行きなさい」
「そうですか」
防御なんてしてないんだけどな。……まあいいや。
とりあえず100以上の階に行けたから、個室ゲットだな。これは一文無しの僕たちにとったら嬉しいことだ。
「さーて、サインはどうしてるのかなあ」
サインを探そうと、周りを見渡してると、ありえないものを見つけた。
「…………何やってるんだ?」
そこにはサインがいた。
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