ふざけた芝居(ふざけた試合)





人生に疲れた?

俺は歩くのに疲れたよ。





「おー、私の兄弟マイブラザーよ。なぜ我らは戦わねばならぬのか!?」


「それ以上言うな!兄弟ブラザーよ。これはやらねばならないことなのでござる!」


「なんとこの世を恨めばよいものか!兄弟ブラザーに拳を向けねばならぬとは!」


「しかたないでござる!兄弟ブラザー!!こうなってはせめて我が拳で倒してみせるでござる!」


「望むところだ私の兄弟マイブラザー!!返り討ちにしてくれよう!」


「…………なんだ?あれ……」


 僕の目の前には満身創痍になっているサインと、どう見ても会社勤めのサラリーマン・・・・・・・・・・・・・・・・が、なにやら叫び合いながら拳を交わしていた。


 …………えーと。


 どうしてこんなことになったかというと、どうやらこの状況を見てみるに、戦いあっている二人は次第に友情を誓い合い、兄弟にすらなったらしい。


 周りでは、「いい話や……(涙)」とか「萌えるわー!!」とか小声で呟いたり叫んでる人もいた。……っていうか、これを見て萌えるってどういう頭をしてるんだろうか。


 なんたって、十代の女性と、四十後半の禿ズラのおっさんが殴り合ってるのだから……。


 ……………………。


 現実逃避してもいいですか?


「おおーっと、サイン選手!どうやら勝ったのはサイン選手のようだ!!皆さん!サイン選手に惜しみない拍手を!!」


 なにやら解説までついてるし。しかもこれまた大きな拍手するし……。


 うーんと。うん。さっきから嘆いてたらふつふつと怒りが芽生えてきたよ。


「ま、私の兄弟マイブラザー。私の――グルブワッ!!」


「さーて。それじゃあいくぞサイン」


「おおーっと!ゴングの上に上がった選手がとどめの一撃をスクワイ選手に放ったぁー!!鬼か、悪魔か、地獄の閻魔かぁー!!」


「うるさい!!」


「おい……あいつヒソカ以上の残虐な奴だぜ――」「あいつには近寄らないのが無難だな――」


 さっきからヒソヒソヒソヒソうるさいんじゃー!!僕はいろいろな感情を込めた視線をサインに送った。


「それじゃあ行こうか、サイン」


「え、あ、う、わ、わかったでござる……」


 あれー?なんか怯えてるなあ。何でかなー。


 僕はうふふふふふと微笑みながら、何やら何かに怯えているサインの手を引っ張って、この場から立ち去った。


 そういえば審判から何階なのか聞き忘れたな。まあいいや。




















「それで、なにが私の兄弟マイフレンド なの?」


「それは、彼が兄弟に相応しい――」


「そんなこと言ってないの!」


 ここは待合室。普通ならばここは待っている選手でいっぱいなのだが(事実、さっきまでたくさんの人がいた)、気がつくと僕たちを残して誰もいなくなっていた。まあ、好都合だ。


「どっからどうみても普通のサラリーマンだっただろうが!どうしてこんなところにサラリーマンがいるの?というつっこみはさておき、なんでお前が勝てなかったんだ!?」


 初めて会った時は、よけるのに必死な斬撃を繰り出してきたというのに。あれほどの腕前があったなら、あんなやつ、一撃で倒せるだろうに。


「いや……剣を持ってなかったから」


「剣?」


「うん。拙者の念能力は剣を持ったときに初めて作動するのでござる……」


 しどろみどろになりながら、サインは僕に弁明してきた。


「念はいいから――ってまさかあのときのは念能力だけで……」


「基礎能力はまったくないでござる」


「……………………」


 唖然とした。いや、まさか相手が、しかも夢小説で出てくるようなオリキャラがまったくもって弱いなんて誰が考える?(楽屋オチ)


「――お前の父さんに鍛えてもらったって……」


「拙者の父上はすごく弱いことで有名だったのでござる」


「そんなに生きてるんだったら、少しばかり基礎能力ぐらい……」


「そのための念能力でござる」


 僕は床に崩れ落ちた。まさか、まさか自分の周りにこんな奴が出てくるとは思わなかった……類は友を呼ぶというが、今回はそれとまったく逆だ。


「――よし!僕の念修行と一緒にお前の体力修行もやるぞ!!」


「えぇー!」


 サインは見るからに嫌そうな顔をしている。それをみた僕の頭は、先ほどから切れに切れ続けている何かがまたも切れた。


「お、ま、え、の、ために言ってるんだろうが!いくら不死だからといって痛くないわけじゃないだろうが!それにお前が早く強くならなかったら個室を十分に使えないだろうが!」


「もしかして最後のが本音でござるか……?」


 なにやらボソッとサインが呟いたが、菩薩の心を持った僕は快く許してやった。


「――痛い痛い痛い!!許してないじゃないかでござる!」


「これはお前のためを思っての行動だ!そのせいで僕の心は血の涙を流してるんだよ!」


 サインを殴りつけといて僕はこれからどうするか考えた。とりあえず……。


「お前、今日は床で寝ろよ」


「な、レディー相手に何を言うでござるか!」


「うるさい! お前が本当は女だって読者の皆さんは忘れてるから大丈夫だ」


「うううううううううう」


 サインは何やら泣いていた。そんなことよりも。


「そんなこととはどういうことでござるか……」


「僕に念を開通させてよ」


 たった今僕が考えたことを口に出した。こういうのはてっとりばやくやっとくに限る。


「まあ、別に大丈夫でござるが……一応これを聞くのは義務でござるので一応聞くでござる。ゆっくり起こす方か、今すぐに起こすほうか」


「それって義務なんだ……もちろん早く起こすほうを」


「まあ分かっていたでござる」


 そう言ってサインは僕の後ろに回り込むと「上着を脱いでくだされ」と言った。


 言われたとおりに上着を脱ぐと、何やら暖かく、ぶよぶよした物が背中にくっついているような感じだった。


「それではいくでござるよ」


「うん」


 サインがそう言うとそれ・・は来た。


「うわぁ。なんかいっぱい吹き出てるなあ」


「そのままにしてると死ぬでござるよ」


「うん。知ってる」


「……っち」


 あれ?何やらサインさん、舌打ちしたぞ?なんか性格変わってるように見えるのは気のせい?


「えーっと、たしか水の流れを意識するんだったよな……」


 それを念じていたら次第にそれ・・が形を作っていた。


「ううううう。なんでこんなに簡単にできるでござるか?拙者なんか何回も死んでしまったでござるよ?」


「それは多すぎだから」


 あれ?ってことはサインもすぐに起こすほうを選んだんだよな。ということは師匠がいたわけで。


 いろいろと聞きたいような気がしたが、やめておいた。なんとなく、聞かないほうがいいような気がしたからだ。


 いつか、それとなく聞いておこう。


「それじゃあ、纏もできたことだし――」


 僕はここでニマっと笑った。


「修行に入ろうか。サ、イ、ン」


「ぎゃー!何かよく分からないでござるが、とてつもなく悪いことがおきそうな予感がするであるぅー!」


 なんか、「ある」とかつけるぐらいにサインは混乱していた。


 ふふふふふ。別にどうってことないのに。ただ、僕が双識兄さんにやらされたのと同じことをするだけなのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ねえ(黒い微笑)。



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