苦労が水の泡……



ロイヤルストレートフラッシュ!!



「それにしても合格者二名は厳し過ぎではないかね?」


 豪快な飛行船の上から狸爺――もといネテロ会長が尊大に声を掛けてきた。別に僕に対して声を掛けてるわけじゃないんだけど。


 そして、飛行船からネテロ会長は落ちてきた。もう年なんだから、そんなことやめたらとも思う。


 ちなみに、僕はネテロ会長と初めて会うわけでは無い。どれくらい前だったかは忘れてしまったけど一度、僕はあの狸と出会ったことがあるのだ。非常に悪印象しか持っていないのだが。


「――それで、メンチ君。その合格した二人はなんて言う名前なのかね?」


「ええっと……たしかハルトと呼ばれていて……もう一人はサインでした」


「ハルト……サイン。ほほう。確かあの二人も受けておったの。ハルトは偽名か……」


 やば……。ネテロ会長に僕が試験を受けてることばれてたのか!? これはやばすぎるんじゃね?


「どこかで聞いておるかと思うがの! 二人も再試験を受けるんじゃよ! ほっほっほ」


 ……………………え?


 さ、再試験……?


 もう一回? しかもあの、卵取りを……?


 せっかく合格したのに?


「あああああ、もう! あの狸爺!!」


 絶対、僕らだってわかったから再試験にしたんだ! 駄目だった人を合格させるものにするんじゃなく!


 ああ、くっそー!! 忘れてた僕も僕だ! すっかりこのことを忘れてた! 


 って、もう飛行船が発進するじゃないか! 僕達も乗り込む……駄目だ!! そしたらヒソカに僕達がばれてしまう!


 ……く。しかたない。幸い、山の場所は分かってるんだから。


「サトツさん! 僕達行って来ます!」


「…………。そうですか」


 なぜかサトツさんの瞳が鋭かった気がするけど……まあ、気のせいだろう。


 僕はサインを背中に背負い込んで山に向かって走った。そういえばサインの奴、妙に静かだな……。背中を覗き込んでみる。


 寝ていた。


「……………………」


 お前、寝るって……そりゃ飛行船の中では寝るのもいいのかもしれないけど……。


 ここで寝るって……。まあ、いいけどさ。


「…………はあ」


 なぜだか僕は凄い苦労人のような気がしてきた。ため息もでるってものだ。









 僕が山にたどり着いたとき、もう飛行船は着いていた。僕は静かにサインを横たわらせ、谷に降り、卵を二つ手に入れた。


 そして上がってくるときに、最も見たくない奴と出会ってしまった。


「やあ♥」


「ひ、ヒソカ!」


 あれだけ避けてたのに結局見つかってしまった……いままでのは苦労はなんなんだってものである。


「ああ、別に戦わないよ♣ 君は僕よりもずっと強い♣ だから、僕がもっと強くなったとき……お相手を願おう♥」


「あ、そうか……」


 どうやらヒソカは今のところ諦めてくれたらしい。よかった……確かに、ヒソカは殺人狂だが、殺すことを考えてるのであって、自分が殺されないようにするのは当たり前なのかもしれない。


 戯言だが。


「それじゃあな!」


「うん♦ばいばい♣」


 僕は急いで谷からはい上がると、深呼吸した。


 すー、はー、すー、はー。


「よし! これでこそこそしなくてすむぞ!!」


 よかったよかった。何が原因か分からないけど、ヒソカが諦めてくれたから普通に、堂々と行動できる。主人公組とも一緒に行動できるというものだ。そもそも僕はそれ目当てで来たんだし。


 僕はサインの元に行って起こした。


「おい、サイン。起きろ。卵持ってきたぞ」


「――――むにゃにゃ。卵……玉が五……」


「……起きろ!!」


「ふぺ!?」


 僕は怒鳴りつけて、なんとか起こすことに成功。


 サインはここがどこなのか分からない様子で、きょろきょろと顔を動かしている。


「しゅ、主君。ここ……どこでござるか?」


「ここか? ここは……天国だ」


「嘘をつかないでほしいでござる」


「えーっと、なんだっけかな。まあ、とにかく、山だよ」


「まあ、山でござるな」


「そうなんだよ」


「……………………」


「……………………」


「ハンター試験でござるか?」


「あー、うん。そう」


 僕は第二次試験が再試験になり、この卵を取りにいかなければいけなかったことを話した。


「それじゃあ、早く取りにいかねば!」


「もう取ってきてるって」


「あ……そうでござるか。それはありがとうでござる」


 そして、ヒソカがもう追いかけてこないことを言うと、サインは半狂乱になった。


「うっひゃあ! ほう!」


「気持ちは分かるけど、止めてね」


「よかったでござる! あれは怖かったでござるー」


 目に涙さえも浮かべながら、サインは言った。そこまで怖かったのか……。


「それじゃあ、主人公組のとこに行くぞ」


「合点承知でござる」


 僕達は主人公、ゴンを探す。どこであろうか……あ、いた。


「おーい。ゴン」


「あ、ハルト!」


 ゴンは元気がいい声で声を出した。ああ、癒されるね。


「どこいってたの? 試験中、探したけどいなかったよ! しかも二次試験いつのまにか合格してるし……」


「まるで見つからないようにしてたみたいだったぜ?」


 キルアも言ってくる。僕はそれに対して苦笑しながら答えた。


「いや……僕達はヒソカから逃げたから」


「ああ」


「ふーん」


 二人はそろって僕達を同情心溢れる瞳で見つめてくる。くそ、止めてくれ。そんな瞳で見るのは……。


「まあ、それも勘違いだってわかったんだけど……それじゃあ、また一緒に行動しような」


「うん!」


「そうだな」


 笑顔の二人が僕を暖かく迎え入れる……わーお。素晴らしい。


 まあ、戯言かな。


「それで、ハルトは卵をもう食べた? おいしいよ!」


「いんや食べてないけど……サイン。はい、これ」


「これがそうでござるか。では、一口……――……――……お、おいしいでござる!!」


 サインは目に鱗といった表情で叫ぶ。口の中の物、飛び出してないだろうな。


「そんなにおいしいなら僕のもあげるよ」


「ほ、ほんとうでござるか!? もらうでござる!!」


 サインは僕の卵をひったくるようにとって、そして食べた。後には満足げなサインの笑顔。


 ……なんとなく、食い物で釣った気分……。


「ありがとうでござる。主君」


「いや……いいよ」


 それじゃあ、飛行船に乗るか。


 僕達は飛行船の中に乗った。ネテロ狸と出会わなかったのは、凄く嬉しいけど……また出会うんだろうなあ……。



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