ゲームアンドゲーム(裏)

苦しめ苦しめ苦しんでくれ。

「ねェ、今年は何人くらい残るかな?」
 メンチは問いを皆に投げ込んだ。
 ここは試験官のみがいる部屋。そこではメンチが作った料理を食べていた。
「合格者ってこと?」
「そ。なかなかの粒だと思うのよね。一度全員落としといてこう言うのもなんだけど」
 ブハラが聞き返すと、メンチはあっけらんと言った。
 ブハラとメンチは言葉を交わす。
「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」
 ――メンチみたいな試験官じゃ、一人も残れないだろうし。
 ブハラはその言葉は飲み込んだ。
 メンチはそのことに気付かずに言葉を紡ぐ。
「そりゃま、そーだけどさー。試験してて気付かなかった? けっこういいオーラを出してた奴いたじゃない――サトツさんどぉ?」
「ふむ――そうですね……ルーキーがいいですね。今年は」
 サトツは試験を思い出しながら言った。その言葉に、メンチは食いつく。
「あ、やっぱりー!? あたし294番がいいと思うのよねー。ハゲだけど」
 ――唯一すし、知ってたしね。
 食べ物を咀嚼しながら、ブハラは心の中で呟いた。
「私は断然99番ですな。彼はいい」
「あいつ、きっとワガママでナマイキよ! 絶対B型! 一緒に住めないわ!」
「そういう問題じゃ……」
 熱くなっているメンチに、ブハラは小さく呟いた。
「ブハラは?」
「そうだね――ルーキーじゃないけど、気になったのが、やっぱ44番……かな」
「!」
「メンチも気付いてたと思うけど、255番の人がキレ出したとき、一番殺気だしてたの、実はあの44番だったんだよね」
「もちろん知ってたわよ」
 苦々しげな口調になりながら、メンチは言葉を綴った。
「抑えきれないって感じのすごい殺気だったわ。でもブハラ、知ってる? あいつ、最初からああだったわよ? あたしらが姿見せた時からずーっと」
「ホントー?」
「そ。あたしがピリピリしてたのも実はそのせい。あいつ、ずーっとあたしにケンカ売ってんだもん」
「私にもそうでしたよ。彼は要注意人物です……そういえば、要注意といえば彼(、)もそうですね……」
「彼……? 誰なの?」
 サトツは頷いて言った。
「407番のことですよ。彼は本当に要注意です。得体が知れない」
「そうー? 別に普通だったような……ああ、そういえば異様に早かったわよね」
 試験を思い出して、メンチは頷いた。
「今から思い出せば、変な点がいっぱいあるのよねー。変に急いでたし。まるで、私が切れるのがわかってたみたいだったわ、よ――あー!! あの資源泥棒ね!!」
 いきなり鬼の形相になって、メンチはサトツの襟袖を掴み、振り回した。
 サトツの髭が揺れに揺れる。
「あんの資源泥棒! せっかく、あんな腕がいいのを一人だけにするなんて世界の喪失だわ! あんにゃろ……こんど会ったらめっためたに――」
「そ、そうですか……」
 やっと解放されたサトツは、服装を正し、そして改めて言った。
「彼は要注意人物です。彼は試験を詳しくしっているかのような節が見られ、変更点も知っていたように思われます。恐らくは念能力なのでしょうが……」
 虚空を見つめていたかと思うと、サトツは、メンチに瞳を向けた。
「なにより、彼は怖い(、、)。恐怖を感じます。相対してるだけで殺されるかのような気がしてきますね。この試験のなかで最も異質な存在でしょう――44番よりも」
「そうかしらねー?」
 メンチは納得いかなさそうであったが、サトツは確信を込めて呟いた。
「彼は――もしかしたら殺人鬼かもしれません」

「くしゅん!」
 僕は鼻を手で擦り合わせた。まだ、むずむずする。うーん……。
「これは僕のことを噂してるのかな?」
「自分を過大評価しすぎでござる。ふざけんな、でござる」
「さいですか……」
 僕は溜息をついて、もう一度目を瞑った。
 夢の中だけでも、家族の元へ戻る為に。



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