やっとやっとの試験入り
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青春を見返せ。
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エレベーターに乗ったまま元の定食屋の店長のところに上った僕とサイン。あのあと僕らは、店主さんからもう一度焼肉定食四人前をもらい(ひどく驚いていたがちゃんと作ってくれた。彼は僕の人生で最も良い人ベスト10に入る人だ)もう一度降りてきた。
ドアから出ると、そのときなにやら妙な視線が僕たちを囲んだ。敵意でもましてや殺意でもなく、まるで呆れたかのような視線だったのが気になったが――というかこっちを見てる人を睨み返したら十人が十人呆れ返った表情だったが――まあ、たいしてなにもなかった。
マーメンという豆男(?)から僕が407番の、サインが406番のプレートを受け取り(ちなみにこいつも呆れ顔だった)すたすたとこの場から離れる。
なんだ?どいつもこいつも。失礼にも程がある。僕はマーメンのことがわりと好きなほうだったが(どれぐらい好きかと言うと彼の念能力が意外に強かったら笑えるだろうなあと考えたくらい)、今からその認識を変えねばなるまい。
そう思ってサインにその旨を話し掛けると、サインの口からも呆れたような言葉が出てきた。
「何を言ってるんでござる?きっと彼らは拙者達が一度ここにきてもう一度上がっていったのを見ていたのでござる」と言った。
……………………。
あーそうか。なんだなんだそういうこと。よかったね、マーメン君。僕のわりと好きなキャラランキングに生き残ったよ。
とかなんとか考えてる間にあの有名なベルの音が会場内を響き渡った。
「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!」
「お、始まるみたいだね」
「そうでござるね」
『やっと』という修飾語を使いたいところだが僕たちは来たばっかなので言えない。
…………かっこつけたい年頃なんだけどなあ。
「ただ今をもって受付時間を終了いたします。ではこれよりハンター試験を開始させていただきます」
こちらへどうぞ、サトツ……さんが地価トンネルの奥を指し示した。
いけないな。どうもマンガのキャラだからついつい呼び捨てにしそうになっちゃう……まあいいか。
「それじゃいこうかサイン」
「はいでござる」
二人で頷きあいながらサトツの後を歩いた。しばらくすると歩くが走るに変わり、さらに勢いが早くなる――。
「始まったな」
「そうでござるな」
ハンター試験第一次試験が始まった。
「それじゃあサイン。僕はこれから用事があるからここで走っておいてくれ」
「えぇ!?」
五分ほど走った後僕は重大なことに気付いた。このままだったら主人公組みと出会えなくなる。
ここまで来たのなら知り合いぐらいに『縁』を合わせなきゃ――。そう思ってサインに言ったのだが……。
驚愕を顔に貼り付けた格好でサインは僕の方を見た。どうやら僕の言葉は唐突なものだったらしい。絶句と言った風であり、足は動かしながら固まるという離れ業を行っている。
なかなかおもしろい顔だったが、話が進まないので続きを促す。
「――次は?」
「主君は拙者がこの試験を合格できると思っているのでござるか!?」
「いや思ってないよ」
僕はきっぱりさっぱり綺麗さっぱり断言した。なにやらその言葉にサインは傷ついたような顔をする。
「そこまで断言しなくても……」
「それで合格できないことがどうしたの?」
「何のん気に言ってるでござる!このままだったら十分とたたないうちに拙者は試験落ちでござる!主君は何か考えていたでござるか!?」
「――あ」
少しばかり考え込む僕。サインを見て地面を見て、またサインを見て僕は晴れやかにこう言った。
「もちろん考えているさ」
「嘘でござる絶対に嘘でござる死ねそして地獄に行けこのくそ野郎」
「……なんか聞き逃せない言葉が聞こえた気がするなあ」
「気のせいでござる」
「気のせいか気のせいかなあ気のせいだね、きっと……」
「そうでござる」
……くそ。この済ました顔のサインを一発殴ってみたい。
実行してみた。
「――何をするでござる!」
怒られた。
「いや別に他意は無いんだ。ただ殴りたくなってね」
「見事に他意が無いでござるね……」
がっくり、という効果音が付きそうな勢いでサインの首が落ちた。しかし、すぐに上がってくる。
「それでは主君!もし拙者の体力が無くなったら……」
「無くなったら?」
なにやら一大決心をしたかのような顔つきになってサインは言った。
「拙者を負ぶってくだされ」
「別にいいよ」
手をふらふらさせながら僕は言うと、サインが呆気にとられた顔つきで「……へ?」という言葉を口に出した。
「?……いや別に良いよ。ただし。本当に体力が無くなったらの話だからね」
「わかってるでござるもちろんのことキャッホーウ!!」
……………………。
サイン、壊れた?何やらよく分からないが意味不明の言葉をぶつぶつと呟いている。
こ、怖ッ!
「――それじゃあ僕の用事があるから――サインも来るか?」
「もちろんでござるゥ〜」
気持ち悪ッ!なんかでれでれしながら僕の肩を叩いてくる。妙に痛い。
…………なんか最近、というか会ったときからだんだんと双識兄さん化してるような気がする。
…………最悪だぁ。
「――それじゃあ頭つんつん子供と猫々少年を探してくれ」
「……それは人間でござるか?」
「もちろん」
「……猫々少年はともかく、頭つんつん子供というのは髪の毛が尖ってると言う意味でござるか?」
「うん。そうだよ」
おや、心当たりがあるらしい。もしかしてもう見つけたのかな。
「それならここにいるでござる」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
本当だあ。なんか目の前に、僕とサインの間(黒字)にいるやー。こんな近くにいるのに僕は全く気付かなかった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「…………こんにちは」
とりあえず挨拶してみた。
「こんにちは!」
挨拶を返してくれた。良い子だ。
「って、違うだろッ!」
返してくれなかった。悪い子だ。
「お前、なに気軽に挨拶返してんだよ」
「だって挨拶されたじゃん」
「確かに挨拶されたがよ!明らかにこいつら怪しいだろうが!」
「だって挨拶されたら挨拶し返さなきゃ」
「普通はそうだがよ!こいつらは普通じゃねえって言ってんだよ!!」
「でも挨拶はちゃんと――」
「ああーッ!!もうわかったから!!」
むきゃーと叫ぶ少年に僕は肩をポンと叩いた。
「まあまあ落ち着いて」
「お前が原因だろうが!!」
「落ち着きなよ、キルア」
「お前が原因なんだよ!」
うーん。どうしたのだろうか。なぜこんなにいきりたっているのだろうか。サインに確認してみても「わからないでござる」というし……。
「というわけで君は今、孤立状態だ」
「わけわかんねえよ!」
わけわかんないらしかった。
「――うーんとまあ、とりあえず次回に持ち越します」
「次回ってなんだよ!!」
「次回は次回さ。それでは!」
「だから次回って――」
このままでは終わりそうに無いのでとりあえずキルアの台詞を切ります。
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