ただただ走る、いつまでも
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それではバイバイ
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「そろそろか……」
「どうしたでござるか?」
「いや、なんでもないよ」
人類が最も使う、そして最も胡散臭い言葉で僕はサインに返した。「そろそろ」というのはレオリオのことだ。
試験が始まってからだいたい三時間ほどたっている。たしかマンガではここが大きい場所になっていた。
ちらっとレオリオを見てみると息も絶え絶えになっている。
そろそろだな。
「大丈夫?」
ゴンに尋ねられたレオリオは親指を上げて答える。どこからどう見ても大丈夫じゃないんだけどね。
「レオリオ!!」
「ほっとけよ。遊びじゃないんだぜ、ゴン」
いや君は遊びで来たのでは?僕もほとんど遊びだし。
レオリオは疲れにより、もう走ることはできないといった状態だ。この先の展開をしらなかったら僕ももう無理だと思っていただろう。
「…………あ、なら!」
「いや無理」
ゴンの言葉に僕は即答で拒否した。確かに僕はサインを背負ってるけどこれ以上は無理だし、これをやってるのは僕とサインが近しい関係にあるからだ。
でもさ。そこで悔しそうに僕を僕を見つめるのは止めてくれ……。
「そうでござる。主君にそんなことさせてはいけないでござる」
「じゃあ降りろ」
今になって僕はあのような約束をしたことを後悔した。
おおっと、話が脱線してるな。いまはレオリオだ。
「――ふざけんなよ……絶対ハンターになったるんじゃぁぁぁー!!くそったらぁ〜!!」
「うおおおおお」という周りに迷惑な大声を発しながら、レオリオは走り去っていった。
レオリオって好感は持てるんだけど……あまり関わりたくないよね。
レオリオの様子を見たゴンは安堵した顔になり、そしてレオリオが残した鞄を竿で吊り上げた。
「鞄の一本釣り!……ってとこか?」
「なにを小声でぼそぼそ言ってるでござる」
なんとなくサインの顔に頭突きしときました。
「おー。かっこいいー。後でオレにもやらせてよ」
「スケボー貸してくれたらね」
「僕にも貸してくれないか?主にスケボー。こいつを乗っけて蹴りながら進みたいんだけど」
「……一応やめてくれ」
ふむ。結構本気だったんだけどね。
とりあえず。
一次試験脱落者、零。
「いつの間にか一番前に来ちゃったね」
「うん。だってペース遅いんだもん」
「僕はそっちのほうが良かったんだけど」
「主君!楽をしてはいけないでござる」
「てめえが言うな!!」
いま僕らは、この妙に長い階段を上っているハンター試験受験生軍団のトップで走っている。
レオリオが走っていってから、ゴンとキルアはいままでのペースなんてしったことなしという感じでペースを上げていった。いや、別に彼らがいくらペースを早くさせようと知ったこっちゃないんだが、問題は、僕の腕を彼らが掴んでることだった。
右手をゴンが。左手をキルアが。
おかげで僕はどんどんと走っていく彼らに引きずられる形で――ここに辿り着いたわけだ。
いろいろと言いたいことがある。
まずひとつ。あんだけ警戒してたキルアがなんで僕に懐いてんだ?おかしいだろ!?いくらマンガの世界だっていってもさ!ご都合主義かよコノヤロウ!
もう一つ。ゴン、お前ってなんなのさ。そりゃキルアは暗殺一家さ。ものすごく鍛えられてるんだろうよ。でもよ……ゴン。お前はただ野山を駆けずり回っていただけだろうが!!それだけでこんなにすごいなら世界中に超人ができるわ!!
「……と言いたいところをぐっと堪える大人な僕」
「五月蝿いでござる」
「黙れ」
サインに対して殺気を覚えたとき、ゴンに声を掛けられた。
「――ねえねえ。は?」
「なに?」
「だからなんではハンターになりたいの?」
うお!もうそこまで話が進んでたか。
どうやら僕がいろいろと考えてる間に話が進んだらしい。
「理由……ねえ」
これといってないなあ、と答えるとゴンとキルアはえー!!と不満の声をあげた。
「そんなこと言われてもなあ。――そうそう。僕が試験を受けた理由は――」
「拙者は主君にくっついてきたからでござる」
「……………………」
……………………。
殺してやろうか?この鎧娘。
「…………秘密」
「そんなー!」
「ええーい、秘密だ秘密!!」
自分でも子供と思うが僕は駄々をこねた。
……自分で駄々をこねたとか言うのは変だな。
「お、出口だな」
「そうでござるなあ」
ようやっと出口が見えてきた。ふー。やっと光ある場所に出れる。
僕たちはトンネルから脱出した。
詐欺師の塒。ここ、ヌメーレ湿原の通称らしい。
詐欺師と聞いて僕はあれを思い浮かべる。ハンター読者なら誰でも思い浮かべるあれだ。
正直、関わりあいたくないんけど……。
「無理なんだろうなあ……」
はあ。
「ウソだ!!そいつはウソをついている!!」
僕の目の前で繰り広げられている状況は正に喜劇とでも呼ぶものだった。
どこからどう見てあれが本当の試験官だと思うのだろうか。あんなのが試験官だったらハンターというものを疑うぞ?あのサルはサトツに似てて笑ったが。
もちろんわかってるだろうということで、僕は背中にいるサインを見た。
「……………………」
ものすごい真剣な顔で見ていた。
え……?
ち、ちょっと待ってくれ……!こ、こいつ、もしかして信じてるの?……あれを?
そういえばこいつ、強化系だったなー…………。
「そいつはハンター試験に集まった受験生を一網打尽にする気だぞ!!」
お、そろそろヒソカのトランプが来るぞ!念のため僕も用心しておこう。
「くっく★なるほどなるほど◆」
ヒソカは原作の通りに説明を始める。思うのだけど、そんなの後で考えたことじゃないのか?
ふー……それにしても僕に攻撃がこなくてよかった。もし来てたら絶対に、
殺さなきゃいけなかったから。
零崎一賊にたて突く輩は皆殺し――この不文律は今でも有効だからね。
「ほー、そういうことでござったか」
背中で感心してる馬鹿は無視しよう。この前一通り説明しなかったか……?サインよ。
「それではまいりましょうか。二次試験会場へ」
一次試験が再開した。
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