零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第一話)







因果応報。

それって何でもかんでも当てはめただけじゃないの?




「ねえ皆。せっかくの正月だ、皆で過ごそうだから他識のところに行こう!!」


 そもそもの事の始まりは、双識のこの言葉によって始まった。きょとんとした顔で、零崎舞織、人識、軋識、曲識は聞いていた。


 しばらくの間、沈黙が辺りを漂い、それに耐え切れなくなったように軋識が言う。


「――…………一つどころでなくいっぱいあるっちゃが、それでころか行動に示してわからしたいことがいっぱいあるっちゃが、とりあえず一つにしとくっちゃ。――双識はそのスカスカ頭だから忘れてるのかもしれないっちゃが、他識は異世界にいるんだっちゃよ?」


「もちろん分かってるとも。わかりすぎて逆にわからなくなってくるぐらいね!しかし、他識君だって家族無しで正月を迎えるのはとても嫌なはずだろう?いやそのはずだ!」


「三文理論を展開してるところ悪いっちゃが、その返答では分かってるとはとても思えないっちゃ。むしろ心配で頭が割れそうだっちゃ」


「おや?それは大変だね!僕は君が割るほうだと思っていたが本当は割られるほうだったのかい?それは大変だ。いろいろと書き直さなくてはね!」


 そう言って双識はどこからか大学ノートを取り出し、そして人識が削っていた鉛筆をとってそこに書き込んだ。


「……ひとつ訊きたいことがあるっちゃがそれはなんだっちゃ?」


「これかい?これは『家族ラブラブノート』さ!――えーと……『アスは殴るより殴られるが好き』っと」


「おい、貴様は生きることをやめたのか?そういえば貴様は自殺志願だったなそうなんだなよしそんなに言うなら殺してやる!」


「おいおい、アス。『ちゃ』が抜けてるよ?まったく……ただでさえ薄い存在なんだからキャラ付けしないと忘れ去られてしまうぞ……読者に」


 やれやれと言った風に首を竦める双識に、軋識はいろんなものをつめた溜め息をついた。


「うん?……ああ、そうか。君はこう言ってるんだね?無識はどうするのかと。大丈夫さ。無識はいっぱしの大人だからねえ。それぐらいの寂しさだったら立派に克服できるとも!」


「一言も言ってない上にいきなり話が変わってるっちゃ……しかも全くこっちの質問に答えてないっちゃ……」


 はぁ、と溜め息をつく軋識に人識が言った。


「大将、兄貴に合理的な受け答えを期待しちゃだめだぜ」


「それはわかってるっちゃが……」


 それでも気疲れしてしまうのであろう。軋識は肩を落としていた。


「……他識が無識でなく、我々がいなくて寂しがることは無いと思うが、レンが言うならそうなのだろう。悪くない」


「いや、悪いだろ」


 ファゴットを小さく鳴らしながら呟いた曲識に人識がつっこんだ。


「絶対に行かないほうが他識のためだぜ。無識の野郎が行くならともかく、この優しい優しい人識君が行くだけならともかく、兄貴が行くのは絶対にだめだな」


「……それは人識も同じことだと思うが、人識が言うならそうなんだろう。悪くない」


 静かに言う曲識。すると伊織――舞織は「うがー」と叫んだ。


「うー、皆さん目立ちすぎです!ただでさえ私が出てる夢小説って少ない――むぐ」


「それ以上は止めようぜ、舞織」


 小説のキャラクターとして言ってはいけない言葉を舞織が口に出したとき、人識が回り込んで舞織の口をふさいだ。


「双識さんだって言ってたじゃないですか!」


「言っていい奴と悪い奴がいるんだよ!」


「……それは確かにそうですね」


 ちらと双識の方を見てから、舞織は納得して頷いた。


「それで兄貴よお。やっぱり行かないでいいと思うぜ。この前他識の様子を見に行った無識の野郎がなんか暗くなって落ち込んでたからな。いままで懐いてた分、寂しいんだろうぜ」


「だから行くんじゃないか!」


「だから寂しいのは無識のほうだって……。だから向こうの世界の他識も楽しくやってんじゃねえか?それを邪魔するのは野暮ってもんだぜ」


「それは困る!」


 双識は大声を上げた。他の面々は双識のこうした行動にもうなれっこなのか、少しも動揺しなかった。


「他識君が楽しくやってたらせっかくの計画が台無しじゃないか!!」


「ちなみに聞くがその計画ってなんだっちゃ?」


「無識がいない間に親睦を深めて僕こそが真の兄だと認めさせる計画だ!その名も『無識がいない間に他識君のハートを取っちゃえ!兄弟のスキンシップは何よりも大切さ!計画』さ!!」


「……………………あほだっちゃ」「……………………しかも名の方がなげえし」「……………………最低」「……………………レンがそう言っても違うだろう。悪い」


 明らかな周りの冷たい視線をものともせず、双識は尚も続ける。


「この計画を成功させるにはなによりも僕こそがこの計画を考えたのだということを言ってくれ。そうすれば「なんと素晴らしい人だろう、いや兄さんだろう」と考えてくれるはずさ!」


「なんてアホだ馬鹿だ変態だとは思うかもしれないっちゃね」


「むしろこんどこそ愛想つかれるんじゃないですか?」


「かはは。ここまで馬鹿だとは俺も思いもしなかったぜ」


「他識の言うことが目に浮かぶようだ。悪くない」


 双識は軋識達の声など聞こえないようで、ふんふん言いながら口笛を吹いている。


「言っておくが俺は行かないっちゃよ」


「あ、私もです」


「俺も」


「僕もだ」


「何を言ってるんだい?皆行くんだよ?」


 ごく当然のように言う双識に軋識達は眉をひそめた。


「ちなみに強制的に連れて行くからね。じゃあ潤さん!よろしくお願いします!」


「へーへー」


 そこに赤が現れた。赤い服を身に纏い、赤き髪を生やして、目の色も赤い存在。


 世界最強の請負人。


「小娘……」


「あれ?兄さんじゃねえか。へー、お前零崎一賊だったんだなー。おどろいちった」


「あのときの小娘じゃねえか。なんでこんなところにいる?」


 嬉しそうな哀川潤と、額に縦皺を浮かばせている軋識は話し合っていた。その様子を見た人識と舞織はヒソヒソ声で話す。


「――ねぇ、軋識お兄ちゃん『ちゃ』が抜けてるよ」


「――そうだよな。気持ち悪いよな」


「……………………それで何の用だっちゃか?」


「ふっふっふ。それは僕が説明しよう!」


 なぜか話の腰を折った双識が高らかに言った。この場にいる全員が「ウゼェ……」と呟く。


「潤さんは僕たちを異世界に連れてってくれるのさ!僕の依頼でね」


「おい、てめえ。あの限定フィギアちゃんと渡すんだろうな」


「もちろんさ」


「ふん。それならいいぜ」


 そう言って潤は赤い瞳で周りを見渡す。潤に追われていた人識と舞織は逃げる寸前だ。


「それでは皆さんをご招待するぜ!ここが婦女子の夢見るハンター世界だ」


 一瞬にも満たない間に風景が変わっていた。周りは木、木、木である。


 ここは異世界だった。


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