零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第2話)
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磨かれた靴で蜘蛛を潰したい
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「はあ、お正月か……」
「お正月?なんなの?それ」
カレンダーを見ていた僕は、ある一点を見つめて溜め息をついた。その言葉をゴンが目敏く聞きつける。
ここはとあるホテルの一部屋だ。僕は金持ちであるにも関わらず(天空闘技場で稼ぎまくった)貧乏臭くハンターライセンスを使ってるのだった。
べつにいいや。ケチンボな人は浪費家じゃないってことだからね。つまり僕は浪費家じゃないってことだ。その言葉は僕にとって褒め言葉だな、うん。
……………………。
今、僕と一緒に旅してるのは、もちろんのことサインと、ゴンとキルアだった。
キルアには今日の食事などを買いに行かせてるので(気分は子供のお使い)ここにいるのは僕、ゴン、サインだった。
「正月ってのはね。年が明けるときにする、まあお祝い事みたいなことかな。僕の住んでいた世界での昔からの行事さ」
「へー、そんなのがあるんだ」
感心した様子のゴン。
「そうさ。子供たちはお金欲しさに「お年玉」というのをお年を召した老人方にたかり、老人たちは寂しさゆえに金で心が買えると思い込んで、喜んで金を渡すという、丁度ギブアンドテイクが成り立っているものなんだよ」
「……へえ」
「そして年が明けたなら、神社という場所まで行って、老人にたかるだけじゃまだ足りないのか、なんと神様にまでたかるという恐れ多いことを全国約一億人の人がやってるのだよ」
「……ふーん」
「ほかにもいろいろと面白いことがたくさんある行事なのさ」
「……面白そうなのかなあ」
ポツリとゴンが呟いたが無視。
「……さーて。それじゃあトランプでもするか」
「なんで?」
「正月といったらトランプするのは決められたことなんだよ」
「……決められたことなの?」
「決められたことなの!」
頷きつつ、僕は昔を回想した。
正月が来たとき、僕達は無識兄さんの家に集まった(いつも迷惑そうな顔をしてたものだなあ)。
そして双識兄さんがいつも「さあ、さあトランプをしようではないか!」と叫んで……それで何でトランプしなきゃいけないのか軋識兄さんと喧嘩してて……それで結局やることになったんだよなあ……。
六人もいたからばば抜きのときは面白かったけど七並べと大富豪は最高に最悪だったな……。
「そうだなあ……大富豪にしよう。このネーミングが面白い」
僕はそうゴンに返し、うたた寝してるサインの近くににじり寄っていき――
頭を蹴った。
「ッッッッッ!?」
「ほら起きろ。トランプ大会するぞ」
サインは頭をさすりながら、まだ寝ぼけてるのかぶつぶつと何やら呟いていた。
「それじゃ――」
「それじゃあやろうではないか」
双識兄さんが嬉しそうに言った。
……………………。
……………………あれ?
……………………双識兄さんっていてたっけ。
「……………………はぁ!?なんでこんなところにいるんだよ!しかもしゃっかりコタツ入って!」
「うふふふふふ。それは君が寂し――」
「はあ、他識がいるってことはここはハンター世界っちゃね……」
「かはは!傑作だぜ」
「私も来てますよー」
「他識がいるってことはそうなんだろう。悪くない」
「軋識兄さんに人識兄に舞織に曲識兄さんまで!どうしてこんなところに――っていうかいつ来たの?」
「いまさっきだっちゃ」
「おーい、僕も混ぜてくれよー」
「え?ってことは今さっき、ここについたばっかってこと?だから突然ここにいたの?」
「おーい」
「そうだぜ?かはは」
「おーい……」
「無識兄さんは?」
「あいつはまたどっかの世界に行ってるっちゃ」
「ううう……」
「そうかー、それは残念だなあ……無識兄さんが一番来て欲しかったのに」
「ううううう――」
「しかたないっちゃ。好きで無識は異世界にいってるわけじゃないんだからっちゃ」
軋識兄さんが僕を慰める。本当にいつも思うけど、軋識兄さんほどいい人っていないよなあ……。この点に関しては無識兄さん以上だろう。
「はやく聞けよ!」
ついに双識兄さんが怒鳴った。いつもと少し様子が違う。
「せっかくお兄ちゃんが涙を偲んで会いに来たのにその冷淡ぶりはなんなの!?他識君!」
「涙を偲んで……って来たくなかった会いたくなかったの?」
「そんなわけないじゃないか!ただここまで来るのに多大な犠牲を払ったからね!」
そう言って胸を張る双識兄さん。しかし、その行動は僕の心にいらいらを募らせるしか効果を持たせない。
つまり僕はむかついているのである。
「おい!双識!!よくも、よくも……」
「そ、双識って……なんでお兄ちゃんって言ってくれないの?」
「ふざけんな!よくもゴンたちに余計なこと言ってくれたな!!」(拍手参照)
「余計なこと?」
双識は不思議そうに首を傾げた。野郎、本当に忘れてるらしい。しばらくすると「ああ」と呟き、手をポンと叩いた。
「ああ、あのこと。僕が彼らに君が――」
「ああ!!それ以上言うな!」
「そのことを怒ってるのかい?でもねえ、友達に隠し事ってのはやっぱりいけないんじゃないのかい?」
「一人も友達を持ったことが無い奴が言うな!――それに友達にも少しぐらい隠し事はするし、そもそもあんな情報なんて隠し事とは違う!」
「と、友達が一人もいない……」
あああ、とうめきながら双識はゆっくりと倒れていった。見ると、顔は蒼白になっている。
お前はアホか。
「零崎ってのはそもそも友達を持てない集団じゃないか。――それにゴンとキルアは友達じゃないよ」
後半は声を低くして(つまりゴンに聞こえないように)囁きかけた。
「彼らは物語の主人公だから一緒にいるだけ。――サインは僕からしたら友達だけど、サインからしたら主君だからなあ」
「うん?それじゃあ君としては友達だと思っていないのかい?」
「まあね。――でも、ゴンたちが僕のことを友達だと思ってくれてるのに、僕は友達だと思えない。これほどの劣等感ったらないね。しかも意固地になって友達じゃないと思ってるんじゃなく自然と友達だと思えないんだからさ」
「そうかな?僕には君達が友達に見えるよ。たしかに零崎は友達を持てない、持つことができない集団さ。でもね――」
君は石凪でもあるんだよ?
双識兄さんはそう言った。
「……………………」
「別に君が意地を張らなくてもいいんだよ。もう零崎は変わり始めている。友達を友と言ってもいいんだよ?」
まあ友達じゃないんだったら別にいいけど――双識兄さんはそう結んだ。
友達――それは持ってもいいものなのか?
不死のサインでなく――まったく普通の人間と……?
それは…………それは…………まるで僕が零崎ではないかのような――――
「それでなんでこんなところに来たの?来るには潤さんの力が必要不可欠なはずだよ」
僕は無理やり話題を逸らす。これ以上考えるのは無理だった。
「ああ、それはね……」
双識は話し始めた。実にくだらない理由を。
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