零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第三話)



生きれば生きるほど死が近づいてくる

生きれば生きるほど死が怖くなくなる


「――というわけなのだよ。わかったかな? 他識君」

「ほほーう。言いたいことはそれだけか」

「いやいや。まだまだ言いたいことがたくさんあるよ。まったくいい足りないね!」

「そんなこと、どうでもいいんだよ!! 何、そんな身勝手でいて理不尽でいて迷惑を振りまき、不幸を配るようなことをしてるんだよ!」

「おや? 私はそんなにも人の運命を変えられる人物だったのかい? それは嬉しいことだね」

「し! る! か!!」

 僕は右拳に思いっきり力を溜めた後、双識に笑顔で話し掛けた。

「これから思いっきり力をこめて殴りかかるから奥歯かみ締めるなよ!」

「……え、それって逆じゃないのかいってそんなに怖い顔しないでお願いお願いだからやめ――――ぐぼげぼらァッ!」

 僕の拳の前に双識は呆気なく散った。ふ、他愛無い。

 いろいろなストレス諸々をこめたパンチを放ったおかげで、僕の精神は平安を保つことができた。ふー、すっきりすっきり。

 少しばかり落ち着いてから周りを見渡すと、実に面白い情景が見渡せた。

 人識兄さんと舞織姉さんは眼を輝かしてはしゃいでいる。「人識君! 人識君! ほらほら、ここが噂のハンター世界ですよ! びっくり仰天ですよ!」「噂にゃなってねえがな。かはは」とか大声で喚いている。

 貴様らは幼稚園児か。

 もう一度言おう。

 貴様らは幼稚園児か。

 軋識兄さんと曲識兄さんは隅っこで、なにやら人生について語っているようだ。こう言っては失礼だが、この二人はこれ以上なくそういった雰囲気が似合っている。「――なんでこんなことになったんだろうっちゃかね。どこから間違えたのかっちゃね。もしかして生まれたときからっちゃか?」「そんなこともないと思うが、軋識がそう言うのならそうなのだろう。悪くない」

 ……………………。

 あんたら爺さんか?

 もう一度言おう。

 あんたら爺さんか?

 そして、ゴン、キルア、サインは何がなんだかわからないといった様子で、辺りをうろうろしていた。

 うむ。こういう状況か。

「――さて、どうしたもんかな」

 とりあえず思うことは人数多すぎだろうということだ。よし! こうしよう。

「そりあえず、聞け!!」

「は?」

「おい、双識兄さん。いつになったら帰るの?」

「それは私に帰って欲しくないという――」

「もう一回殴るよ?」

 見せ付けるように双識の目の前で握りこぶしを作ると、双識は顔を蒼くした。というか、今のを聞いてそんな風に思う双識兄さんの頭が分からない。もともとわからないし、分かりたくもないが。

「――……夜に迎えに来て貰うつもり……です。はい」

「それじゃあ、夜まで暇だな……それじゃあ初詣でも行こう」

 うん決まり、と僕が軽く頷くと、軋識兄さんは反論してきた。

「ここはハンター世界だっちゃろ? そもそも神社がないっちゃ」

「あるよ」

「……は?」

「だからあるって。しかも歩いて二分で」

 僕が苦笑しながら言うと、軋識兄さんは「なんてご都合主義だっちゃ……」とか呟いた。

 軋識兄さん……それ言っちゃだめだよ。

「それじゃあ皆で神社に行くよ。どうせなら正月らしくしよう!」

「他識が言うならそうしよう」

「別に良いぜ。かはは」

「楽しそうですねー」

「……ご都合主義だっちゃ……」

「他識君と初詣かあ。――うふふ。楽しそうだねえ」

 我らが零崎一賊は一名を除き、皆納得したようだった。しかし――

「ハツモウデ?」

「他識! それってなんなんだよ」

「拙者もわからぬでござる!」

 というハンター組もいた。……っていうかサインは日本出身じゃねえのか?

「初詣っていうのは……まあ……つまりはお祭りだな」

「お祭りかあ。楽しそうだね!」

「お祭りねえ。まあ、楽しめそうじゃん」

「楽しみでござる!」

 うきうきうきうきとゴンたちは目を輝かせていた。こういうのを見ていると、やっぱり子供なんだなあということが、よく分かる。

 …………サインはもうお婆さんといった年だけど。まあ精神は子供だし。ガキだし。

「それじゃ神社に行くか。――それでどうする?」

「……? 何がだ?」

 人識兄さんが首を傾げながら訊いてきた。ところで体中にいたるところにあるナイフを握るのは止めてくれ。

「実は神社が近くに二つあるんだよ。一つは見た目立派で、見るからに御利益ありそうなとこ。もう一つはおんぼろで、朽ち果てたように見えるけど、実際の御利益はいっぱいあると評判のところ。僕は二手に別れたらどうかな、と思ってるんだけど……」

「はい、はーい」

「何? ゴン」

 ゴンが元気よく手を上げた。

「オレは朽ち果てたとこに行きたい! なんだか面白そうだから!」

「それじゃ、オレも」

「拙者は主君と一緒に行くでござる」

 子供三人組が我先にと言ってきた。ふむ。予想通りっていったら予想通りかな。

「それじゃあ、残りはグッチーででも決めようかな」

「そりゃまた子供みたいな……」

「何か言ったかな? 人識君」

「――べ、別に……」

 冷や汗をたらたら流しながら人識は言った。視線を逸らしてるのが気になるけど、まあいいとしよう。

 僕達大人組(僕はまだ二十歳超えてないけど)はグッチーをやった。よく考えてみると、いい年した大人が集まってグッチーするのは、ちと不気味だな……。

「うふふ。決まった決まった。私と、ゴン君、キルア君、アス、舞織ちゃんがその古いお寺に行くんだね。……うーん。他識君と一緒に行動できないのは残念だね」

「それで、僕とサイン、人識兄さんに曲識兄さんが立派なお寺――と。……うーん、双識兄さんから離れれたのは嬉しいけど、なにかしでかしそうで
怖いな……」

「それなら一緒に――」

「よーし。それじゃあ行こう。あ、キルア。これがそこまでの地図だから」

「お、サンキュー」

 僕はキルアに地図を渡し、そして玄関に向かって歩いていく。

「それじゃあ二手に別れよう。夜になったら、家に集合ということで」

「わかった!」

 全員が声を揃えて答えた。


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