零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第四話)
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死者を冷遇しよう
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「神社とは――神道信仰に基づいて作られた宗教施設のことなんだ。教会、モスクのような礼拝堂や、教えを広めるための布教所とは違って、僕達の為のものというより、神様を祀ってあるという意味合いが強いんだ。そもそもだよ? 神社はお祭りのとき、そのときそのときに立てるものであって、常設ではなかったんだ。……それに、神社の本体である本殿を持っていない神社というのもあって、実に様々なものがあるんだな。――――――――by
Wikipedia」
「へー、そうでござったか。でも、あまり内容が無いでござるな!」
「はははー…………黙れ。詳しく知りたい人は自分で調べてね? 僕は調べてみたけど意味が分からなかったから」
「主君は頭が悪いでござるねー」
「あははー………………死ね」
僕はにっこりと笑いながら、サインの頭蓋骨向かって消化警報(デリートミュージック)を突き立てた。どうッ、とサインは後ろに倒れる。
僕達は他識組。ぐっちーで見た目立派で、見るからに御利益ありそうなところに来た。
うん。双識兄さんから離れられて本当によかった……。
「うんん? 何度見ても不思議だなこりゃ。どういう原理でできてるんだ? それで殺してもいいのか?」
「うーん。一応やめて?」
「かはは。それは独占欲か? みにくーい独占欲か? うん?」
「いーやー。ただ単に後の処理が面倒くさいだけ。他に他意は無いと――思うよ?」
「かはは。傑作だな」
僕と人識兄さんは談話した。一賊の中で意外と数少ない会話できる人なのだ、この人は。いろいろおかしく、変で、異脱してそうに見えて――いや、実際に異脱してるのだけど、会話は成立する。さすが、戯言遣いの鏡の反対側だ。
いや、戯言だが。
「――ッ、主君!」
いつの間にか回復していたサインが僕の胸ぐらを掴んできた。額には交差点が作られ、顔が真っ赤になっている。つまり、俗に言う『怒っている』状態だ。
「うふふふふゥー! さあさあ! 主君! 懺悔の時間がやってきたでござるよ!! いい加減に! その! すぐ拙者を! 殺す癖を! 改める! で! ご! ざ! る!!」
「そんなに感嘆符ばっか使ってたら読者は読みにくいから止めてあげて?」
「――――!! そんなことどうでもいいでござる!! 今、拙者が言ってるのは――」
「おい!! てめえ、何言ってるんだ? 今の発言は読者様を侮辱してるのか!? なんてことしてくれてんだ!! 死んで詫びろ!!」
「かはは! てめえは越えちゃいけない『何か』を超えやがったな。かはは――殺して解して並べて揃えて晒してやんよ!!」
「そのような意見があることは否定しない。だが、俺は二人の意見を採用しようと思う――それもまた、悪くない」
三対の瞳に睨まれて、サインはかなり慌てている様子だ。本格的な殺気を浴びて恐怖に身を強ばらしているのかもしれない。はっきりいってどうでもいい。
「まあ、いいやー」
「それで、何でここはこんなに豪華なんだ? そこのところ教えろよ」
「……………………」
「……………………」
僕と人識兄さんは前に向き直ると、また歩き始めた。後ろから足音がしないんで振り返ると、曲識兄さんとサインは呆然とした様子だ。
「何してんの? 二人とも」
「石像になっちまうぜ? かはは」
「…………そうだったな」
「何が?」
「お前らと無識はそっくりだとアスが言っていた……」
軋識兄さんは何かを諦めているかのような顔で、失礼なことを呟いた。まったくもって、失礼だ。
「僕を――」
「俺を――」
「こんな狂った奴といっしょにしないでくれる?」
「こんな狂ったブラコンといっしょにすんな!」
……………………。
しばしの沈黙。
……………………。
活動開始。
「人識兄さんが何を言ってるんだよ!! 上を向いたら下を向いて、とうとうひっくり返る癖に!」
「いつやった!? いつ! ……てめえこそ、いい加減、そのブラコンを直しやがれ! この前、無識がため息ついてたぞ! 『抱きつきが痛かった』ってな! てめえは双識と一緒の人間だぜ」
「双識!? あいつといっしょにしないでよ! あいつと一緒なんて聞いたら――ほら! 鳥肌が!!」
「まあ、それは納得できるがな」
「でしょ? よかった。人識兄さんも同じ考えで」
「かはは。傑作だ」
「うんうん」
僕と人識兄さんは互いに頷き合うと、肩に手を乗せながら、そして笑いながら、歩いていった。
「本当にそっっくりでござる……」
後ろの声は無視して、僕は歩いていった。
神社と言ったらお参り。結婚式、七五三、引っ越し祈祷など多々ある。だけど、神社といったら絶対やらなければいけないものがある。それは――
「そうだ! おみくじをやろう!」
僕は曲識兄さん、人識兄さん、以下一名に対して呼びかけた。
「神社といったらやっぱりおみくじでしょ! おみくじ! あの、自分はどういう星の巡り合わせか知ることができ、友情が結べたり、切れたりする、老若男女問わず親しまれているあの!!」
「おみくじ? それは何でござるか?」
「あー、三点」
「なにがでござるか!」
「そんなの読者の皆様方は予想できてるでしょうが。もっと奇想天外な言葉を吐かなくちゃ――ちなみに427点中ね」
「奇想天外!!」
「……………………何?」
「え? だって主君が奇想天外を言えって…………」
「…………それじゃあ、おみくじ引こうか!」
「しゅ……主君?」
「お金は僕が負担するから。僕って、なにげにお金持ちになっちゃったからね」
「しゅ――」
「よし。あれにしよう。三百ジェニーだって!」
「かはは。殺人鬼の俺達が神頼みねえ。神様が願いを叶えてくれるとは思わねえがな」
「殺人鬼の俺達がおみくじ……それもまた、悪くない」
「……わかったでござる」
「え? サインは自分で出してね。自分のお金、持ってるでしょ?」
「――お、鬼ィー!!」
「ははははは。殺人鬼だから!」
僕達はおみくじを売っているところに行き、『今年一年良い一年でありますよーに! (株)おみくじだーいすき会社』という名前が書いてある箱から紙を取り出した。
…………いつか潰れるな。この会社。というか潰れろ。
「えーと。俺は――中吉か。中途半端だな。この俺にお似合いってことか?」
「俺は――大凶か。それもまた、悪くない」
「いや、悪いだろ」
僕もおみくじを開いてみる。そこにあった文字は、大きく、太字でたった二文字――最悪――と書いてあった。
……………………。
最……悪? 言うに事欠いて最悪?
「……この会社、潰れろ!!」
サインはどうだろうと、僕はサインの手元を覗き込んだ。僕の目に飛び込んできたのは『死ね』の二文字が。
……………………。
この会社、絶対潰れるぞ!?
サインは体をふるふる震わせていた。たぶん、貧乏揺すりだ!!
「それじゃあ、帰ろう」
「おい、他識。お前はなんだったんだ?」
「帰ろう」
「おい? 何、急いでるんだ?」
「か、え、ろ、う!」
「――お、おう」
僕は人識兄さん以下二名を引き連れて、神社を出、家に歩いていった。その道すがら、どうやって(株)おみくじだーいすき会社を皆殺しにしようかと考えながら。
あ、お参りするの忘れてた。まあ、いいや。
僕達が家に帰ると、そこにはゴンが既に帰っていた。どうやら、双識組は僕らよりも先に帰ってきたと思い、声を掛けようとすると――
「ほ、他識!!」
体当たりをされた。僕が何をしたのだろうか。薄れゆく意識の中でそう考える。
「他識! ねえ、他識!! こっちが危ないんだ! お願い! 来て!」
ゴンは大声で、しかも耳元で僕に叫んできた。正直、大きすぎて何を言ってるかわからなかったが、何か緊迫した状況であることはわかった。
「――それで……どうしたの」
「幻影旅団と双識さんが戦ってるんだよ!」
「な……それを早く言え!!」
その一言を聞いて、僕は急いで駆け抜けていった。目的地は古ぼけた神社。ゴン達を置いて、僕は幻影旅団の元へと走っていった。
幻影旅団を殺さないようにするために。
他識宅では。
困惑した様子のゴンとサインと人識と軋識が、ぼーっと立っていた。
「えーと……こんにちは!」
「おう」
こんな会話が繰り広げられたそうで。
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