零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第五話)



私は世界に貢献してる!

だから世界を壊してやる!


「うふふふふふふふふ……!」


「双識。気持ち悪いっちゃ。ほら、見るっちゃ。子供達がドン引きっちゃよ?」


 ところかわって、ここは古くぼろぼろな神社。双識、以下四名が集まっている。四名とは軋識、舞織、キルア、ゴンのことであった。


 双識が口元をにやにやと歪ませながら、低く声を放っていると、軋識が突っ込む。その軋識の突っ込み言葉に双識は返答した。


「私は気持ち悪くなんてないさ! むしろ私は頼りがいのあるお兄さんという立場だろう! でもそれはいけない……私という殺人鬼は――君たちのお兄さんにはなれないのだよ!」


「そんなこと誰も聞いていないっちゃし、むしろうるさいっちゃ。そもそも支離滅裂っちゃよ? まあ、支離がちゃんと通っているレンの方が不気味で不気味でしかたないっちゃが。……となると双識自体が迷惑っちゃね。死ぬといいっちゃよ。むしろ自殺しろ」


 淡々と双識に軋識は返した。さすがに何十年も双識と一緒にいれば慣れるというものであろうか。慣れてしまった彼が不憫であるが。


 そんなとき、キルアとゴンは目を輝かせながら、「俺達探検してくるね!」と言って走っていってしまった。そんな様子の二人を見て軋識は呟く。


「若いっていいっちゃね……エネルギッシュっちゃ」


「お兄ちゃん。それじゃ老人の呟きですよ? そんなに年を取ったのですか?」


 首を横に傾けながら、舞織は可愛らしく尋ねる。そんな舞織に軋識は「はあ」とため息をついた。


「確かに年はまだ若いっちゃが――俺の周りにいる奴はみんな俺より若い奴っちゃからねえ……体は若いっちゃが精神が……」


「うえええ? 私はそこで突っ込んでくれることを期待してたですよ!? なんでそこで悟っちゃいますか!? 突っ込んでこそのお兄ちゃんでしょ! そして後から惨めに感じるのがお兄ちゃんでしょ! さあ、突っ込め!!」


「普段、お前が俺のことどう思っているかよくわかったっちゃ……!」


 軋識は握り拳を作り上げる。ところどころ震えているのがわかった。


「そうだッ! こうしよう!」


「…………何がだっちゃ?」


「何がって……何が――何……何だろう。アス、知ってる?」


「知るわけないっちゃ!!」


 思わず軋識は怒鳴った。


 そして舞織と双識は笑顔で言葉を吐く。


「わーい! やっと戻ったー!」


「てめえら……いったん死ねっちゃ……! いや……俺が殺してやろうっちゃか」


 殺気を込めて二人に挑むも二人はおちゃらけた表情を変えなかった。


「そんなのアスができるわけないだろう? チキンな君が」


「お兄ちゃんはへたれ属性ですからねえ。へたれは女性に人気ですからよかったですね!」


 尚もニヤニヤと二人は笑い続けた。そんな二人の様子に軋識はうなだれる。


「似たもの兄妹め……!」


「兄妹ですから」


「あたりまえじゃないか」


 軋識はますます重い気分になり……気分転換に“愚神礼賛”でも振り回そうか。そう考えていると――――


 その声は、この古い神社内に響き渡った。小さい神社であったこともまた原因であろう。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 三人はその声がゴンだと判断するやいなや――声がした方向に走っていく。その行動はやはり家族だと納得できるほど息があっていた。


 血の繋がりでなく――流血の繋がりである家族であったが…………。








 ゴンとキルアは二人で神社を探検していた。次々に現れる珍品、希品に目を輝かしながら。


 そして二人は会話を紡ぐ。


「それにしても……他識の家族って変だよね!」


「そうだな。まあ、他識の家族だし。それに殺人鬼だからな」


 ゴンの言葉にキルアは同意した。それにゴンが食いつく。


「それだよ。殺人鬼集団って言ってたけど、全然見えないよね。なんかいい人の集まりぽかったし」


「そうか? ――――俺は冷や汗でいっぱいだったぜ……?」


 静かにキルアが呟くと、ゴンは、えー、そう? と納得していない顔をした。


 ――本当にあいつらって何者なんだ?


 キルアは心中で考える。


 ――他識とかが言ってたように……あいつらただものじゃねえ。常に人を殺し続けてる奴らだ。他識もおかしいように感じてたけど……他識が一番おかしいやつなんだと思っていた。だけど、みんな変だ。俺達とどこかが違う……。


 ゴンと一緒に探検しておもしろい物を見つけて目を輝かせながらも、キルアは静かに考え続けた。


 ――そもそも殺人鬼集団って聞いたとき、一瞬ヒソカの集まりを思い浮かべちまったが――あのときは気持ち悪かったな――そんなもの目じゃなかった。ヒソカよりもあいつらは……おかしいやつらだ。


 ――ずっと前……前のハンター試験、俺が親父達を殺人鬼と言ったとき――あいつは違うと言ったな。


『殺人鬼というのは……よく間違えられやすいんだけど、殺人狂とは違うんだよ。殺人狂は殺すことが楽しくて楽しくてしかたない奴のことを言うんだ。でも殺人鬼は違う。殺人鬼は楽しんで殺すことなんて無い。別に悲しみながら殺すわけでも無いけどね。――しかも、君達の両親は『殺し屋』だよ? それをあまつさえ殺人鬼だなんて……それは僕ら殺人鬼に対して失礼だし、彼ら殺し屋に対しても失礼だよ。まあ、同じ人殺しではあるんだけどね――』


 ――あのときは意味がわからなかったけど……今日、意味が分かった。


 ――確かにあいつらは違う。あいつらは――俺達とは違う何かだ。だから殺人鬼……殺人『鬼』……なのか……。


 そんなことをキルアは考えていた。そしてゴンとキルア二人は、様々な宝があった部屋を出ると――予想外の人物と出会う。


 その予想外の人物と出会ったことにより、ゴンはある一つの行動に出る。それは無意識の行動であった。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 叫ぶという、ホラー映画ぴったりの言葉を持って。別に相手がホラーというわけではないが。






 三人がゴンが叫んだ場所まで来ると、そこには口をぱくぱくさせているゴン、緊張に顔を固まらしているキルア、そしてその他何名かがいた。


「大丈夫かい? ゴン君。キルア君。私の大事な大事な弟、他識の友達の友達の友達の友達が無事かすごく気になっていたよ!」


「長いっちゃね。短的に言えっちゃ」


 双識はうふふふふと笑いながら、ゴンと相対している相手を見る。黒い上着に黒い靴。額には逆十字架があり、髪の毛はオールバックになっている――


「あッ! 幻影旅団のクロロさんではないか! まさかこんなところで出会えるとは! いや、こんなところだから出会えたわけだが!」


「お前にこんなこと言っても意味がないことは分かってるっちゃが――落ち着け」


「だって幻影旅団のクロロだよ! 漫画好きの人類最強から影響受けた、漫画好きの私としてはこんなチャンス滅多にないのだよ! まあ、どうでもいいという思いが七十五パーセントぐらいはあるけどね!」


「多いっちゃね」


 双識の叫ぶような変態言葉を淡々といなしていく軋識。そして、どたどたという音がすると、曲がり角から何やら集団がやって来た。


「団長! どうした!?」


 そこにいたはマチ、フィンクス、フェイタンである。ちなみにクロロを入れて、他識が過去出会ったことがある四人組である。


「なんでッ! お前、もう旅団と出会えないはずだろ!?」


「これはキリバンだから許してくれるさ。幻影旅団が出ると聞いたらみんな嬉しそうだったぞ?」


 イエス、オッケイ!! そんな腐女子の皆様の声が聞こえるようである。


 でもすいません。もしかしたら気に入らなくなるかもしれないです……。


「マチ、フィンクス。そこの子供達を捕まえろ。フェイタン。そこにいる奴らを捕まえろ」


「了解」


 そして、マチとフィンクスはゴンとキルアを捕まえるために前に出、フェイタンはまず双識を捕まえるために双識の前に出た。


 しかし、ここでいままで旅団を見てきたクロロはおかしなものを見ることになる。


 マチ、フィンクスは突然クロロの場所に戻り――フェイタンはその場で固まっているのである。しかも何やら汗を出しているような……?


「うふふふふふ」


「きひひひひ」


「うふ」


 ――そのとき。何者かの笑い声が響き渡る。それは幻影旅団には聞き覚えが無く……ゴン達にとっては始めしか知らないもの――。


「うふふふふ……楽しいねえ。私はバトルマニアではないが……こうやって守るというシュツエーションは楽しく感じられるよ?」


「家族以外を守って何が楽しいっちゃか? まったく……レンはわからないっちゃね」


「戦いなんて久々ですよー。前にしたのは……あの赤い人でしたっけ?」


 零崎一賊は……静かに笑い出す。そして、フェイタンも動けないほどの殺気を出した。


「ゴン君」


「――え、あ、はい!」


「家まで戻って他識を呼びにいってくれるかい? 私たちは殺人鬼だけど……この世界で殺してもいいものか計りかねてるんだよ。そこのところを聞きたいから、他識をここに連れてきてくれ」


「あ、うん。――わかった!」


 そう言ってゴンは走り出した。その様子を見ていたクロロは動こうとする。


「行かせるとでも――」


「――っちゃ」


 動こうとしたクロロ。実際には動くこと自体はできた。


 左方向からくる攻撃を回避するためのものとして。


「――っく」


「行かせはしないっちゃよ。ここを行かせたら、無識のやつに兄貴面できなくなるっちゃ」


 軋識は『愚神礼賛』を右手に持ちながら「きひひ」と笑った。


 双識も自殺志願を手に取り、舞織もさらに小さい鋏のような凶器を手に取る。


 しばらくの間……五分ほどであろうか。硬直していると、軋識は動き出した。


「ちんたら面倒くさいっちゃ。殺人鬼の俺らが殺人を我慢するなんて世の不条理っちゃよ。――二人とも避けとくっちゃよ。俺の射程範囲内に入らないように……!」


「ああ、駄目だよ! そんなことしたら多分きっと絶対他識に怒られちゃうよ! 怒ってる他識君も見てみたいけど!」


「てめえら……何だ?」


「うん?」


 幻影旅団の一人、フィンクスは脂汗を滲ませながら、双識達に対して問いかける。


「てめえらは何か違いやがる。てめえらと応対してたら……絶対に殺される気がするんだけどな……!」


「それは普通の感情だよ」


 双識は笑って言う。そして軋識と舞織も、次の言葉では一緒に続けた。


「俺達は零崎一賊だから――」


「――まぁぁぁぁぁぁぁーったッ!!」


 その場にいるものが一斉に声を発した人物を見る。


 それは零崎他識の姿であった


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