零崎の皆がハンター世界にやって来た!(第六話)



殺し殺され津々浦々。

そんな毎日暮らしています。


「――まぁぁぁぁぁぁぁーったッ!!」


 僕は大声を出して、その場にいるものの注目を集めた。


「家賊のみんな! 殺さないでよ! 殺したら僕の何年かの苦労が失敗だから!」


「……結局自分本位だっちゃか……?」


「もちろん」


「てめえを無識に育てさせたのは間違いだったかもしれないっちゃ……」


 はあと言いながら、軋識兄さんは首を振る。そして……ここで発言するものがもう一人いた。


「お前は……あのときのやつか!」


「うぅ……やばい! ――ほら、早く! とにかくキルアと一緒に家に戻ってよ! とにかく誰も殺さないでね」


「えー、もう少し家族だからもっとこう……」


「何か言った?」


「言ったけど言ってないことにするよ」


「それでよし」


 僕は四人をこの場から出させようとする。しかし、それを邪魔する奴がいた。


 クロロである。


「お前、幻影旅団に入れ」


「あああーもう! どうせキリバンならそのことも忘れてくれたらよかったのに!」


 しかたないと割り切り、僕はキルアと舞織を背中に背負い込んだ。そして、兄二人に声を掛ける。


「二人とも! 僕の後をついてきてね!」


「わかったっちゃ」


「うふふ。まかせなさい」


 僕は後ろを確認しないで一気に走る。後ろの気配からすると二人……つまり双識兄さんと軋識兄さんがついてきている。他には、いない。どうやら幻影旅団は来ていないようだ。よかった、と一安心。僕は走って家に帰った。





「おい、団長。追いかけなくても大丈夫なのかよ」


 フィンクスがクロロに聞いた。それに対してクロロは答える。


「このまま追いかけても、殺されるだけだ。それはあのときわかっただろう?」


「まあ、そうだがよ……」


 複雑そうにフィンクスは黙る。


「まあ……近くに奴がいると分かっただけでも収穫だ。絶対に奴を――幻影旅団に入れるぞ」


 幻影旅団は静かにうなずいた。


 外では風が吹いている。








「おーう。遅かったじゃねえか」


「――――――――!!」


 家に帰ると……そこにはくつろいでいる赤色がいた。


 双識兄さん達がここに来る原因を作った存在。


「遅かったって――潤さんこそ! なんでこんなとこにこの人達を送り込んだんですか!? いろいろと大変でしたよ!」


「それはいいことじゃねえか。大変になるってことは真剣になるってことだろ? お姉さんは友達が凄いってわかって嬉しいよ」


「見てないのにそんなこと言わないで下さい――!!」


 そんなとき、ゴンと人識の姿が目に入った。二人は仲良くスピードをやっている。


 スピード?


「って、二人とも何仲良くしてるの……。ゴンって何にでも仲良くなるよね」


「主くーん!!」


 ――と。聞き覚えが毎日ある声が左方向から聞こえてくる。突進でも仕掛けてくるかと思っていると、別に何もない。


「……? あれ?」


「へー、あいつって身構える存在なんだ」


「って、潤さんが言ったの!?」


 潤さんはシニカルに笑う。油断も隙も無い人だ。


「あいつは今、トイレにいってるよ」


「そうですか」


「なあなあ。あいつってお前のなんなわけ? うん? これか?」


「そんなことありませんよ。普通の友達……友達? ……友達。友達ですよ」


「へえ、お前の感覚はそんななの?」


「ええ。そうですよ。というかそれ以外無いと思いますが? あいつも僕も」


「そうか……あいつもかわいそうに」


「?」


 なんのことだろうか。潤さんは哀れむような顔になって言った。


 ――ああ、そうだ。ここに潤さんがいるってことは……。


「潤さん。早いとここいつらを連れていって下さい。もう、いろいろと限界です」


「うん? まあ、いーよー。それが目的だしな」


 潤さんは笑いながら、そして次の一言を言った。




「それで……他識は帰るのか?」




「それは……」


 僕は黙り込む。周りに人はいるが、遠慮してるのか、はたまた潤さんが怖いのか話に入ろうとしてこない。


「私の手にかかれば他識も帰れるよ? うん? どうする?」


「僕は……」


 僕は笑顔になって言った。


「まだもう少し、やりたいなあと思うことがあるのでまだ帰りません」


「そうか」


 潤さんは笑いながら言う。


「それじゃあ、こいつら連れて帰るから。またな」


「無識兄さんによろしく言っておいて下さい」


「っけ! あんな奴よろしくしたくないよ! ふん」


 潤さんは無識兄さんとなぜか仲が良くない。なのに、なぜか僕とは仲がよい。よく分からない人だった。


「それじゃあ、他識君! またね!」


「じゃあなっちゃ」


「また会いましょう」


「っは、傑作だな……」


「人と人が別れる……それもまたいい」


「じゃあね! また会おうね!」


「俺はいやだな……」


「じゃあ、元気でいてね! 無識兄さんにもよろしく!」


「あんな奴とはよろしくしたくない!!」


 帰る人全員で合唱された。なんなんだろう。無識兄さんはまさか嫌われてるのだろうか。


「それじゃあさようなら!」


「おう!」


 潤さんは一言叫ぶと――みんなは消えてしまった。あまりにもあっけないものである。


 僕は力一杯息を吸い込むと、後ろを振り返った。


「それじゃあ、トランプ大会でもするか!」


「サインは?」


「あいつは……まあ、忘れておこう」


「それはひどいでござるよ!!」


「うん? もう出たの?」


「そうでござる。っさあ、四人でトランプするでござるよ! はじめは七並べでござるか?」


「そうだね。それをしよっか――」


 僕達はトランプをして夜を過ごした。


 あのとき……潤さんに帰らないかと聞かれて、正直僕は迷った。だが、もう少しこの子達と……サインを見ていたいなと思い、辞退した。


 いつまた、無識兄さんと会えるのかな――そう思いながら横になり。


 そして――僕は無識兄さんと出会うこととなる。


 この世界でもなく、また元の世界でもなく――サインが強く関わりがある世界で――。









 といっても本編は続くよ?


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